人は、ある出来事に対して様々な思い込み(認知)をし、その結果として感情が生まれます。
この思い込みが、間違った方向に行ってしまうと、ネガティブな感情ばかりが出てしまい、非常に生き苦しくなってしまうのです。
間違った思い込みは、認知のゆがみとも言われますが、多くのパターンがあります。
どのようなパターンがあるのか、この記事で紹介いたします。
① 白黒思考
【全か無か(all-or-nothing)思考】・【二分割思考】・【スプリッティング】とも言われます。
物事を「白か黒か」、「正しいか、間違っているか」どちらかにはっきりさせなければ気が済まない、完璧主義の思考パターンです。
少しの失敗やミスも許すことができず、柔軟な見方ができません。
相手のちょっとした発言や行動で、「良い人か悪い人か」評価して決めつけてしまうこともあります。
自分に対しての評価も同様で、満足することも少なく、自信を失ってしまうこともあります。
「○○であることがすべて」といった極端な考え方で、妥協を許せません。
【例】
「試験では100点を取らなければ意味がない。」
「世の中はお金がすべてだ!」
② 一般化のし過ぎ
1度や2度の出来事で、それが毎回起こることのように一般化してしまう考え方です。
根拠が不十分であるにも関わらず、早まった結論をしてしまいます。
一部のことを全体に当てはめてしまい、かたよった物の見方しかできません。
いつも嫌なことが起きているように感じたり、これからもずっと繰り返されるように感じてしまうため、常に不安感や憂うつ感に苦しんでしまうのです。
【例】
「仕事でミスをしてしまった。私はいつも失敗ばかりしてしまう…」
「友人を食事に誘ったが断わられてしまった。また誘っても断られるに違いない…」
③ レッテル貼り
【ラベリング】とも言われます。
自分や他人に対して、一方的・断定的にネガティブな評価をつけることです。
一度起きたことや、一部の性質だけで、物事や人物像を決めつけてしまい、多面的・客観的に冷静な判断ができません。
【一般化のし過ぎ】がさらに進行して深刻化した形です。
【例】
「私はいつも仕事で失敗ばかりしてしまう、全くのダメ人間だ。」
「LINEを無視されることがある私は、誰からも好かれない嫌われ者だ。」
「結婚できていない私は『負け組』だ。」
④ すべき思考
どのような状況であっても、「○○すべき」「○○しなければならない」と考えてしまうパターンです。
自分の中でのルールを作り、それを無理に守ろうとするため、自分自身が追い込まれてしまいます。
そのルールが守れないと、落ち込んで自己嫌悪に陥ってしまうのです。
他人に対しても、自分のルールを当てはめてしまい、それが守られないと、怒りを感じたり、失望してしまうこともあります。
【例】
「体調が悪くても、家事はしっかり行わなければならない。」
「期待に応えるためにも頑張らなければならなない。」
「いつも笑顔で明るく接するべきだ。」
⑤ 過小評価と拡大解釈
自分の長所や強み、上手くいったことを小さく評価したり、自分の短所や弱み、失敗したことを拡大して考えてしまうパターンです。
逆に、他人を評価するときは、良いところが大きく見えて、欠点は小さく見えます。
他人を自分よりも優れていると評価してしまうため、劣等感を抱いてしまうのです。
少しでも良くないことが起こると、最悪の事態を連想してしまい、反対に、良いことが起きても、別に大したことではないと感じてしまいます。
【例】
「職場で表彰された。でも、このくらい誰にでもできることだから大したことない。」
「ミスをしてしまった。私は何をやっても失敗ばかりだ。」
「友人が出世した。私とは違い、これからも友人はキャリアを積んでいくのだろう。」
「友人は外見にコンプレックスを持っている。しかし、私よりは良い外見だし、異性からモテている。」
⑥ 感情的決めつけ
事実とは関係なく、自分の感情を根拠として物事を決めつけることです。
現実的でもなければ、合理的とも言えないにも関わらず、自分が感じていることが事実であるかのように考えてしまいます。
自分の考えたことが正しいかどうかを深く考えられません。
【例】
「あの人といると、何となく不快な気分になる。あの人は性格の悪い人に違いない!」
「誰からも認められていないような疎外感がある。私なんて存在価値のない人間だ…」
⑦ 心のフィルター
【選択的抽象化】とも言われます。
まるでフィルターがかかったように、良いことは見ることができず、悪いことばかりが見えてしまいます。
実際には良いことも起こっているのに、それを認識できないため、楽しさや幸せを感じることができません。
一方、一部の悪いことだけには目が行き、物事の全体を悪いことだと評価してしまい、ネガティブな感情のみを感じてしまいます。
【例】
「旅行中に一度ケンカをしてしまった。この旅行のすべてが台無しだ…」
「自分の成功を、3人の友だちは一緒に喜んでくれたが、1人の友だちからは嫌味を言われた。その嫌味の言葉で一気に悲しい気持ちになった。」
⑧ マイナス思考
たとえ大きな成果を上げても、素晴らしい実績を残しても、喜んだり満足したりできず、逆にその価値を引き下げてしまい、自分を責めたり、落ち込んだりしてしまう思考パターンです。
【心のフィルター】は、良い出来事を無視することをいいますが、【マイナス思考】は良い出来事を悪い出来事にすり替えて考えてしまいます。
他人から称賛されたとしても、素直に受け取れないどころか、悪い方向に考えてしまい、ネガティブな感情になってしまうのです。
【例】
「人から褒められることもあるが、大したことないし価値のないことだ。」
「試験に合格したが、たまたまだろうし合格者は沢山いるから無意味なことだ。」
⑨ 個人化
【自己関連づけ】・【パーソナライゼーション】とも言われます。
自分には全く関係のないことなのに、自分を責めてしまう思考パターンです。
自分には責任のないことであっても、不適切に自分を結びつけてしまい、罪悪感を感じてしまいます。
物事には複数の原因があるにも関わらず、自分こそが第一の原因であると考えてしまうことで、自己評価を下げてしまうのです。
【例】
「家族の仲が悪いのは私のせいだ。」
「あの人の機嫌が悪いのは、私が何か気に障ることをしたからだ。」
⑩ 結論の飛躍
【心の読み過ぎ】と【先読みの見誤り】があります。
心の読み過ぎ
根拠もなく、他人の何気ない言動から、その人の考えていることを決めつけてしまう思考パターンです。
相手の真意が分からないのにも関わらず、相手がネガティブな考えを持っていると思い込み、一人で落ち込んだり、相手との関係性が悪化したりします。
【例】
「LINEで既読スルーされてしまった。私は嫌われているんだな…」
「私の方を見て、コソコソ話している人たちがいる。私の悪口を言っているに違いない。」
先読みの誤り
根拠もなく、将来的に事態が悪化していくと決めつけてしまう思考パターンです。
誰も分からないはずの未来の「予測」を、必ず起こる「事実」であるかのように思い込んでしまいます。
悲観的な将来が待っていると、誤った認識をしているため、不安感から抜け出せません。
【例】
「家族関係がうまくいかない。これからはもっと関係が悪化して崩壊するに違いない。」
「心の内を話せる相手がいない。私は生涯、ずっと孤独に生きていく運命なんだ…」
「誰からも認められないこんな私が、幸せな人生を送れるはずはない。」
もしかしたら、あなたにも認知のゆがみがあるかも知れません。
認知のゆがみを治すための最初のステップは、自分が間違った思い込みをしていることに気づくことです。
そして、次のステップで、その間違った思い込み、つまり認知のゆがみを矯正していきます。
その方法は、別の記事で解説していきますね。